キーワード:中島みゆき
シンガポールで礼拝後教会の方々と食事をしていたときに、どういう事
でその話になったのかは覚えていないが、隣にいた同世代のご夫妻と
中島みゆきのことになった。私のiTunesには「地上の星」が入っています
と言ったら、その方々の車には最近ロサンゼルスで録音された「歌姫」
があるというので、帰りに宿まで送ってくださる車のなかで聞かせてくれ
た。その次第をウイークリー瞑想「シンガポール物語」に書いた。
ポートランドの日本人教会の聖書塾で奉仕で出かけ、40代のひとりの
兄弟の家に泊めていただいた。その夜は兄弟の信仰のこと、家族のこと
をお伺いした。次の日の朝に教会に向かう車のなかで、兄弟が私にどの
ような音楽を聴きますかと尋ねてきた。それで私のコンピュータには中島
みゆきの「地上の星」が入っていますと返答した。それで大変気に入られ
た。
ポートランドでの奉仕を終えて帰ってきたら、30代の終わりの友人の牧師
から、中島みゆきについて私が書いた記事に刺激されて、ご自分が高校生
の時にどうして共感を覚えたのかを振り返って書いたメールが届いていた。
私はシンガポールでの不思議な会話として紹介したたけであるが、この牧
師の心のどこかに届いたようである。
どうして今また中島みゆきが出てきたのか不思議である。私はここで紹介
した方々ほど彼女の歌を聞いているわけでない。ただ神学校で学んでいた
ときから気になる存在であった。最初は自分が学生生活を送った札幌出身
ということがあった。北国の雰囲気がそうさせているのかとも思った。それ
以来なぜ彼女の歌が多くの人の心に届いているのかと関心を持ってきた。
彼女の公式サイトでは、「日本のおいて、70年代、8 0年代、90年代、
2000年代と4つの世代(decade)で、 チャート1位に輝いたアーティストは、
中島みゆき、ただひとりであ る」とあった。
メールをくれた牧師の説明で納得できるものがあった。「好きで聴いてい
たのですが、高校の時の私には、何が良いのか自分でも分りませんでした。
改めて、今考えると『捨てられた者として生きていく』あるいは、『捨てられ
た者として生きている』、または、『捨てられたと感 じるものとして生きている
(生きていく)』、『生きていこうとしている』その心にあるのではないかと思い
ました。」「私は、失恋して聞いていたのではなく、親に捨てられた感覚の中で、
共感を覚えていたのだと、今、気づかされました。彼女の歌詞を思い巡らすと、
捨てられたという感覚を受け止め、それでいて、今を生きていこうとしている
のです。私はそう感じます。」
確かに彼女の歌には生きることの難しさ、悲哀、空しさ、絶望感がある。
しかしそれで終わっていない。人生の悲哀を負いながらも生きていこうとする
ひたむきさ、したたかさがある。この牧師は彼女の「ファイ ト」という曲で語って
いる。「『ファイト。闘う君の唄を、闘わない奴等が笑うだろう。ファイト。冷たい
水の中を、ふるえながらのぼってゆ け。』という歌詞です。、、、世の中は、冷
たい水のようでした。しか し、その冷たい水の中で、生きていけと彼女は励ま
すのです。冷たさを感じつつ、震えてでも、進んでいけるのだと励ますのです」
この牧師はご自分のコレクションを全部処分したと言う。それで図書館でCD
を借りてきて聞き直していると言う。そして再度メールをくださった。学生時代
にもうひとり、尾崎豊という歌手に共感して聴いていたと言う。彼との比較をし
ている。「彼は、生きることに悩みなが ら、‘そこ’に‘いず’、逃げ、反抗し、
盗み、破壊します。私の好きだった彼と、みゆきさんの歌の対比から、みゆ
きさんには、‘そこ’に‘いる’ことを感じます。悲しみを感じ、悩みを感じ、嘆き、
逃げたいと思い、変わりたいと思い、違う結果を求める思いもありながら、
‘そこ’に‘いる’のです。ふと、『わたしはある。』を思い出しました。単なる永
遠の存在という意味の‘ある’だけではなく、そういう意味の‘そこ’に‘いる’
か?とも思いました。」
生きることは容易なことではない。それでも生きていかなければなら ない。
時には逃げ出したくなる。それでも向かっていかなければならない。暗い闇
に覆われる。それでも光りを信じて進むことができる。落胆することがある。
それでも希望を持つことができる。空しさに覆われることもある。それでも
信じることができる。
中島みゆきは時代を読むキーワードである。何に惹かれ、何を求めている
のかを知る手がかりである。シンガポールの兄弟は、今朝も仕事に 向かう
車のなかで「歌姫」を聴いていましたとメールをくださった。 ポートランドの兄
弟は「帰り間際の中島みゆきの話は忘れられないことになりました」と言う。
この牧師は中島みゆきとの対話を通して言う。 「彼女の歌は、暗いので、
クリスチャンになってから、私の中から抹殺 してきたようにも思います。私の
心の空白時代に彼女の歌を聴いていたのですが、それを抹殺することで、
新たな心の空白域をつくっていたように思います。」

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